読書や日常の感想文

読書や日常の感想文

頭の中の文字起こし

超監視社会の世界が怖いけど面白い。ジョージ・オーウェル『1984年』

20世紀の傑作ディストピア小説として有名なジョージ・オーウェルの『1984年』を読みました。

ネットで評価を調べるとどのサイトでも評価が高く、細かな設定と未来を予言したかのような内容は、さすが傑作と言われるだけあって読み応えのある内容でした。

今回は『1984年』の感想と、どんな人におすすめできるか書いてみようと思います。

 

どんな話か?

ビッグブラザーが率いる政党が支配する超監視社会の国オストニアで暮らす主人公が、党に反発するレジスタンス組織に所属する事で世界の真実を知っていく話。

 

どんな人におすすめ?

  • 名作が読みたい
  • ディストピア小説が好き、もしくは気になっている
  • 考えさせられる結末が好き

 

感想まとめ

  • 超監視社会の息の詰まるような描写は、怖いもの見たさに近い感覚で読んでいて面白かった。
  • 物語の一設定の解説を読むだけでも楽しかった。
  • 結末の捉え方は人それぞれになりそう。


 

感想

タイトルの『1984年』。ここから連想できるのは、この西暦に何かが起きた、もしくは起きる、それが良い事なのか、悪い事なのかはタイトルだけでは分かりません。

でも、真っ黒の表紙に白字でタイトルだけが書かれている表紙のデザイン(僕が読んだのは早川書房の新訳版です)はどこか不吉で重苦しい印象があります。

この本のジャンルがディストピア小説である事から明るい内容ではないだろうと思いながら、ネットで検索すると傑作だ、名作だと称賛されているこの作品に惹かれて読んでみました。

この作品が刊行されたのは1949年で、タイトルの年は当時からすれば近未来の世界を描いたものになります。世界大戦の末に世界は3つの大国に分かれ、その内の1つで超監視社会の国が物語の舞台です。

序盤はそんな超監視社会の国での暮らしが描かれ、これがまたえげつない内容なのですが、怖いもの見たさに近い感覚で読んでいて面白かったです。

例えば、テレスクリーンと呼ばれるカメラとテレビが一体になった機械が屋内、屋外問わず至る所に設置されて国民を常に監視していたり、「二分間憎悪」と呼ばれる行事が毎日行われ、テレスクリーンに映った政党の敵と言われる人物に向かって、ありったけの罵声や批判を浴びせまくるといったものが出てきます。

少しでも党に反抗する思想や行動を起こそうものなら、国中に潜む思想警察と呼ばれる秘密警察に逮捕され、存在自体を消されてしまいます。

また、今挙げた例以外にも、思考を制限するために語彙の量を極端に削った新語法「ニュースピーク」や、2つの矛盾する事柄をどちらも正しいと信じることができる思考法「ダブルシンク」など、この作品を語る上で重要なワードはまだまだありますが、詳しく書くと長くなるので説明は省きます。これらは小説の一設定にも関わらず、Wikipediaで個別にかなり詳しく解説がされているので読んでみると結構おもしろいです。

そもそも、Wikipediaで個別に解説がある時点でこの作品がいかに世の中に影響を与えたかが見えた気がしました。

中盤には、主人公が党に反抗する組織に所属してからが描かれますが、党の悪事を暴くとか、思想警察との戦いが繰り広げられるとか、そういうことは一切ありません。

読む前は政党との激しい戦いがあるものと勝手に想像していたのですが、今思えば、もしそういった展開になっていたのなら一気にフィクション感が増して面白くなくなっていたかもしれません。

それに、政党に反抗する意思、思想を持ち続ける事自体が激しい戦いであって、見方を変えれば非常に激しい戦いが繰り広げられていたとも見えます。

そして終盤。

世界の真実が明らかになり、予想しなかった形で終わってしまいます。詳しくは書きませんが、最初は正直めちゃくちゃ後味が悪いと思いました。その結末がハッピーエンドなのか、バッドエンドなのかは考えさせられるところで、僕はハッピーエンド寄りかと思っています。そもそも、ハッピーだのバッドだのと分けて考えること自体がナンセンスかもしれません。

終始暗くて息が詰まる内容でしたが、その分人間が持つ逞しさや美しさが際立つ描写もあり、人間をどれだけ支配し、抑制しようとも、それを跳ね返す力を人間には秘められているぞ、と作者のジョージ・オーウェルは伝えたかったように思えました。

 

おわりに

今回、ジョージ・オーウェルの『1984年』の感想を書いてみました。何十年も前に刊行された本ですが、内容に古臭さは感じず、とても興味深い内容でした。最近、子供が産まれてなかなか本を読む時間が取れなくなってしまいましたが、次に読む本を今探索中です。

余談ですが、たまたまこの本と並行して諫山創の「進撃の巨人」も読んだのですが、国が国民の思想や記録をコントロールすることで支配を保っていた描写が、今回読んだ1984年と重なって両作品共により楽しめました。

常識と思っていたことが全て作られたもので、世界の本当の姿が明らかになる展開ってなんでこんなにおもしろいんでしょうね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。