読書や日常の感想文

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【感想】伊坂幸太郎『死神の精度』

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先日、僕の通勤時間の楽しみだった伊藤計劃さんの『ハーモニー』を読み終えたので、次の楽しみとして伊坂幸太郎さんの『死神の精度』を読みました。

いやー、面白かったです。今回も通勤時間を最高に楽しい時間にしてくれる面白い本でしたので、感想を書いていきたいと思います。

 

あらすじ

7日間の調査の後に対象者の死を見定める、クールで少しずれている死神を取り巻く6つの人生の物語。 引用:Wikipedia

主人公の千葉は対象者の死を見定める死神の一人で、8日後に死ぬ可能性がある対象者の前に人間の姿となって現れて、7日間に渡って調査(主に対象者との会話)する事で、対象者の死について「可」もしくは「見送り」の判断を下す仕事をしています。

死神達が行う調査には明確な基準はなく、良い行いをしたから「見送り」となるわけではありません。最終判断は担当している死神のほぼ気まぐれで、7日間きっちり調査をする死神もいれば、すぐに判断を下して残りの時間を人間界で好きに過ごす死神もいます。気まぐれと言っても、その殆どが「可」の判断になっており、それは千葉も同様でした。

物語には千葉以外の死神(同僚)が登場するのですが、千葉は同僚らとは少し変わっており、千葉は命令された仕事を嫌々こなすサラリーマンのような振る舞いをしながらもきっちり調査を行い、対象者との関わりの中で色々な事を感じて最終判断を下していきます。

 

感想

調査相手と千葉の掛け合いがとにかく面白く、千葉が下す最終判断がどうなるのかが気になってどんどん読み進めてしまいました。

千葉の考え方は非常に合理的で、人間の悩みや行動を理解できないことが多く、調査相手との会話の中で度々空気の読めない発言をしたり、普通は濁すようなストレートな質問をぶつけたりします。でもそこがとても面白く、時には核心を突くような質問で調査相手の本音を引き出したりします。

僕から見た千葉の仕事は、生かす、もしくは死なす理由を調査するものではなく、死に近づいている人(調査対象者)に、そのまま死に突き進むのか、しないかの「選択」を後押ししているようにも見えました。

なので、千葉が調査対象者の死を決めているかのように見えますが、結局はその人自身の選択が最終判断になっているのかなと思いました。

 

ちなみに、6つある物語の中で僕が1番好きな話は「旅路を死神」です。

路上で人を殺して逃亡した若者が調査相手で、その若者が停車中の千葉が運転する車に乗り込んでくるところから物語は始まります。

目的地に向かう道中、若者は千葉と会話をする事で自分の気持ちを整理していき、始めは荒れていた若者が徐々に変化していくのですが、その姿がとても細かく表現されていて読んでいてとても楽しかったです。

どの話でもそうですが、始めはぼんやりとしたイメージしかない調査相手が、千葉との会話の中でどんどん具体的なイメージに変わっていき、それと同時に愛着も湧いてきて「この人は可にしないでほしい!」なんて思ったりしました。

そんな僕の気持ちを裏切って大体は「可」の判断となるのですが、その判断に至るまでの過程が不思議な納得感を与えてくれました。これはうまく説明ができない感覚なので、興味がある方は是非実際に読んで確かめてほしいです。

伊坂幸太郎さんの『死神の精度』おすすめです。

 

最後に

今回は伊坂幸太郎さんの『死神の精度』の感想を書いてみました。

そもそもこの本を手に取った経緯は、もともと漫画以外の本を滅多に読まなかった僕でも、伊藤幸太郎さんの名前は何故か知っていたからです。

というのも、今から10年以上前に週刊少年サンデーで連載していた「魔王 JUVENILE REMIX」という漫画があり、当時の僕はその漫画がとてもお気に入りだったのですが、この漫画の原作が伊坂幸太郎さんだったんです。

この漫画は伊坂幸太郎さんの小説の『魔王』を少年漫画向けに大幅にアレンジした漫画で、特殊能力を持った主人公が悪に立ち向かう物語なのですが、王道の特殊能力系バトル漫画とは違った面白さで、当時の僕は夢中になっていました。

そして最近になって、本を探していたところ伊坂幸太郎さんの名前に目が止まったというわけです。

『魔王』を読もうかとも思いましたが、ネットの口コミで絶賛されていた『死神の精度』を読むことにしましたが、口コミ通りの面白い作品でとても満足できました。

また伊坂幸太郎さんの作品を読んでみたいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。