ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読み終えました。
今まで読んだ本は全てフィクションでしたが、今回は初めてノンフィクションです。別にノンフィクション読みたい!!なんて思っていたわけではないですが、ネットで本を探していた時に一際目立つ黄色の表紙と音楽のタイトルのような題名に惹かれました。調べてみると何やら色々な賞を取った話題作で、有名な作家からもコメントが沢山寄せられていたようなので読んでみる事にしました。
今までに読んだ本は続きが気になって一気に読んでしまったのですが、今回はあらすじを読んでみる限り、"人種差別"や"貧富の差"と言った重ためのワードが並んでいるのでじっくり時間をかけて読む事になるかなと想像していました。
が、ご多分に漏れず、今回も一気に読み切ってしまいました。
こちらも通勤時間のお供として買ったはずなのに、またまたやってしまったわけです(これを見越してもう一冊別の本を買っておいて正解だった)。
この本を一気に読んでしまった理由は、もちろん面白さにあったのですが、それよりも「もっと知りたい」というような気持ちで読む手が止まりませんでした。
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー [ ブレイディ みかこ ] 価格:1,485円 |
簡単にあらすじを説明すると、英国に住む母ちゃん(著者)が現代社会に存在する人種差別や貧富の差などの課題を、底辺中学校に通う息子やその周囲で起きる様々な出来事を通して考え悩み、時には息子に教え、時には息子から教わりながら母子共に成長をしていく姿を書いたノンフィクションです。
難しい内容にも関わらず、問題に対して豪快でストレートな表現で切り込んでいく母ちゃんの文章によって非常に分かりやすく、またそんな問題に溢れた環境の中でも逞しく柔軟に生きる息子の生き方に、僕の凝り固まった脳みそを刺激されっぱなしでした。
更にこれに、母ちゃんと息子のコメディかと思わせる面白いやり取りが加わって、思わず笑ってしまいました。漫画以外の本で笑ったのは初めてかもしれません。
この本には「多様性」というワードが多く出てきます。このワードを聞いて思い浮かぶのは国籍や人種、性別といったところですが、ここに貧富の差も加わる事で更に複雑なものになっている事がこの本からわかります。
母ちゃんと息子はそんな中で生活をしているので、毎日のように人間関係の問題が頻発するのですが、そういった問題に対して悩む息子の純粋で柔軟な発想力には感心しました。
学校の喧嘩で、人種差別的な発言をした生徒が貧乏な人を差別する発言をした生徒よりも重い罰を受けるといったシーンがあるのですが、そうなった理由を「人種差別は違法だから」と言われた息子は「人種差別は違法で、貧乏な人への差別は合法だなんて正しくない」と言ったんですね。
僕がその場にいたら、多分そんな発想はでないと思うんですよね。「確かに人種差別の方が悪そう」とか言って納得していたと思います。
その後も、母ちゃんと息子は一緒にその事について考えて、最後には「人を傷つけることはどんなことでもいけない事」という答えに辿り着き、息子、そして読んでいる僕も納得しました。
こういったエピソードがいくつも入っているので、そりゃあ脳みそが刺激されまくりなわけです。
最近は、僕の近所でも外国の方を頻繁に見かけるようになりました。僕の職場にも中国人の社員がいますし、良く行くコンビニの店員さんも韓国人の時があります。
この本に書いてあるような環境とは比べ物にはならないけれども、外国の方と接する機会が多くなってきているこの状況に対して、この本で書いてあったような多様性の問題やそれに対する考え方は知っておいた方が今後の役にも立つと思いました。
最後に、この本の中で気に入った言葉がありました。相手の立場になって考える事を「誰かの靴を履いてみる事」と表現していたのですが、これがとても僕の中でしっくりくる言葉で気に入りました。
多様性の話とは少し逸れますが、普段仕事をしている職場も殆どが日本人とはいえ、色々な価値観を持つ人達が集まっているので、この「誰かの靴を履いてみる事」という考えは、地雷だらけの職場の人間関係を無傷で切り抜けるためにも必要な事だなと思いました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。